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株式会社エフ・ビー・サイブ研究所
             
【Vol.027】関係の形成:経営者が最も嫌う“こと”に士業チャンスが潜む!(1)
             

  とにもかくにも、足下の“可能性”を広げたい時、士業ビジネスは今後どうあるべきかという“遠大”なテーマを考える時、あるいは、まさに今、顧問契約やスポット契約を提案しようとする時や、顧問先との“関係”にやや不安を感じる時、“知っている”だけで大きなパワーになる“こと”があります。
  それは、一般レベルの企業経営者が“何を嫌っているか”を知ることです。そして、その“嫌悪”を避けるのではなく、“嫌っている部分”に、うまく“士業業務”を組み込んでしまうことなのです。

             
   
    【01】 企業経営者のニーズに従わない?
   
        通常、経営コンサルティングは、企業経営者の“ニーズ”に従って行うものでは“ない”と言えます。経営者のニーズで行うのは“業務協力”であり、“経営指導”ではないからです。なぜなのでしょうか。
  それは、一口に言うなら、経営者は“自分に最も必要なことを決して自分のニーズにはしない”からです。もちろん、優れた経営者は、そうではありません。一般の経営者の“傾向”がそうなのです。
  ただ、先に行く前に、少し整理しておく必要があるかも知れません。それは“最も必要なことを自分のニーズにしない”一般の経営者にはコンサルティングができても、必要なことをニーズにする優れた経営者には、“経営指導”ではなく“業務協力”しかできないのか、という疑問がわくからです。
       
   
    【02】 業務協力と経営指導の使い分け
   
        大企業を相手に行うコンサルティングは別として、中堅中小企業向けに推進する“経営支援”は、結論から言うなら、優れた経営者への“業務協力”か、一般的な経営者への“経営指導”の形をとるのが、実践の世界では普通かも知れません。
  そして、一般的レベルにしかない経営者に“指導”ではなく“協力”しようとすると、無理難題を要望され、無料奉仕を迫られることになりがちなのです。優れた経営者に“協力”ではなく“指導”をしようとする時も、結果としては“無理難題”を押しつけられます。自社経営を熟知した経営者は、理屈で経営にアプローチする人に“現場を教える”義務があるなどと考えてしまうことがあるわけです。 『先生、このテーマ、先生の勉強にも最適ですよね…』などと言われてしまうでしょう。
       
   
    【03】 経営者が“最も嫌う”ものとは?
   
        話を戻しましょう。一般の経営者が“最も嫌う”ものとは、一体何なのでしょうか。答は、実のところ非常に微妙なのですが、委細構わず結論を急ぐなら、それは“自社(経営)の客観化”だと言えるかも知れません。
  単純な話、知人の経営者(顧問先にはお勧めしません)に、『あなたの会社は、同業のB社より売り上げが少ないよね』と言ってみてください。つまり“売上高”という客観的なデータで、その会社を“測る”わけです。業界の平均的な水準と比べても構いません。
  その時、一般的な経営者の多くは、2つの反応を順番に示すことが多いのです。もちろん、その2つの順番は固定してはおらず、時には逆順のこともあり得ます。
       
   
    【04】 一般的な経営者の“2つの反応”
   
        その“2つの反応”の1つ目は、『あの会社はうちとは違う』という、“定性的”、つまり主観以外ではなかなか測れない言い訳や自慢が飛び出すことです。それは時には『あんなすごい会社と比べられたら困る』という、敗北主義的コメントになるかも知れません。
  そして2つ目は、事業や経営には、そんなに様々に“データでは測れない”要素があるのに『それを無理矢理データで比較しようとする先生に失望しました』という“静かな反撃”です。しかし、そこには“静か”ながら、非常に強烈な警告が含まれます。つまり『二度とわが社をデータで他者と比較するな』ということです。
  逆に言うなら、様々な企業を“顧問先”にしている士業先生には、企業経営者から見れば『いつも他社を比較の上で自社を見る人』という警戒感があるということです。それは、とても“やっかい”なものです。
       
   
    【05】 “裸の王様”の道?
   
        警戒感が強いと、経営者側から“関係を深めよう”とはしませんし、逆に、警戒感が強いまま、何らかの拍子に関係が深まってしまうと、経営者は“士業先生を下に見る”ことで、“何を言われても平気なポジション”を作ろうとするからです。『先生は事業(経営)を知らない』等と言われるのは、警戒心の強い経営者に、近づき過ぎたからかも知れません。
  しかし、これは非常に重要なことなのですが、自社を客観化できない経営者に“発展”はあり得ません。他社との比較を嫌がる企業に、経営改善の余地はありません。自分を客観化できなければ、“裸の王様”の道をたどるしかないからです。
       
   
    【06】 経営者が“客観化”を嫌うのは?
   
        この“客観化”の原則は、大企業にも言えることで、他社との比較をしなくなった(する必要のない)大企業の経営は、メスを入れると大変な“モノ”に出くわしますし、逆に大企業が経営刷新に向かうときは、必ず“同業他社”との比較の中で、新たな決断を行うものです。
  ところが、中堅中小企業にはユニークな存在が多い上に、公開されたデータが乏しいため、“比較嫌い”の経営者には、“逃げ場”がたくさんあるのです。そして、それが“中堅中小企業経営の刷新を邪魔する要因”の一つになっているようです。
  真っ向から指摘するなら、『わが社をデータのような客観的(言い訳が聞かない尺度)で他社と比較するな』という感覚は、『わが社の経営は自分流に楽にやりたい。自分が苦痛を感じるような改革には取り組みたくない』という本音の“言い換え”に過ぎないということです。
       
   
    【07】 士業ポジション形成の“2つの要素”
   
        では、そんな状況の中で、士業の経営指導ポジションは、どのように形成すればよいのでしょうか。それは、コンサルティングを意識するとせざるとにかかわらず、2つの要素に注目しておくことで、ある程度容易になるはずなのです。コンサルティングに踏み出すにせよ、顧問業務に徹するにせよ、経営者に振り回されないためには、2つの要素が不可欠だということです。
  その第1の要素は、先生方が『決して他社との比較はしない』存在だという安心感を、経営者に提供することから始まります。結論的には“経営者を客観化”するのですが、先生方ご自身が“客観化=他社との比較”という感覚に注意深くなって、“安易に比較はしない”と心に決めることが大事になるということです。
       
   
    【08】 関与先の“ユニークさ”の認知
   
        そのためには、まず関与先であれ見込み先であれ、その企業の“ユニークさ”を発見し、それを“認知する”ことから始めなければなりません。たとえば極端な話をすると、一見どうしようもないと思える企業でも、たとえば、スキルが低い人材に仕事を提供しているという点で、ユニークな社会貢献ができているかも知れないからです。
  逆に、『この会社、レベルが低い』と思ってしまう時、無意識に他社と比較しているのではないでしょうか。その感覚は、必ず“言葉”や“態度”に現れます。第1の要素で終わるのは論外ですが、第2、第3の要素に進もうとするなら、この“第1の要素”は、案外最も重要かも知れません。
  筆者は若かった頃、自分自身を“ユニーク”だと自負している経営者が大嫌いで、その結果、数々の失敗をしてきました。今では『とっても平凡なのに、その自分をユニークだと思うなんて、この人ちょっとユニークだなあ』と感じることができるようになりました。
  そんな“心の準備”ができたら、実務的な事例を通じて、次回、第2の要素に入って行きましょう。
       
       
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