公認会計士、税理士、会計事務所、マーケティング、コンサルティング
 
 
 
 
 
 
 
 
 

会計事務所、マーケティング、コンサルティング、ヒント集

株式会社エフ・ビー・サイブ研究所
             
【Vol.040】総合戦略:慣れ親しんだ“顧問契約”形態が今後の“足かせ”?
             

  従来、“顧問契約の獲得”が、会計事務所ビジネスの基本であったことは、間違いないと思います。そして、多くの会計事務所が顧問先減少や顧問料値下げ(要求)に悩む今日でもなお、“顧問契約獲得”は、起死回生の頼みの綱のように捉えられることがあります。
 そのため、外部機関を使ってでも、あるいは無理に紹介構造を作ってでも、新たな契約に走る…。ところが、そこで得られれ契約は、時に“驚く程安価”であることも、また現実ではないでしょうか。
  現在の顧問契約形態に“将来”はあるのでしょうか。あるいは、“従来の顧問契約形態”にこだわればこだわるほど、事態は更に悪化して行くのではないでしょうか。
  その“歴史的な大問題”の所在と解決の指針を、ご一緒に探します。


             
   
    【01】 “脱”顧問契約なんて…
   
        今なお、会計事務所の先生方に“脱顧問契約”の話をすると、奇異な表情をされると言うより、“相手にされない”ことの方が多いように思います。それほど、会計事務所ビジネスには“顧問契約”形態が、深い常識として確立されているのでしょう。
  1980年代の経営コンサルタントも、同じような雰囲気だったと思います。当時、大企業向けのコンサルティングは、テーマを絞って1年から数年で行う“プロジェクト”タイプの提案が主でした。期間とテーマが決まるため、コンサルティング料は時に、年間数億円に及びます。
  一方、中堅中小企業向けのコンサルティングは、たとえば役員会に出るとか、経営者の経営相談をいつでも受けるとかの“あいまい”な内容で、月数万円から100万円を超える規模の“顧問契約”を取っていました。経営者から“顧問契約”が取れるようになって初めて、経営コンサルタントは一人前だなどと言われたものです。
       
   
    【02】 顧問契約形態が崩壊した業界もある!
   
        しかし、雨後のタケノコのように“経営コンサルタント”が増えると、当然、今の会計事務所業界のように“顧問料の安売り合戦”が始まります。『ええっ、御社はコンサルタントに月○○万円も支払っているのですか。それで何をしてもらっていますか?』などというスタンスで、コンサルティング会社の営業担当者が活躍したものです。
  その防衛策として、経営コンサルタントの多くは、毎年の契約更新時に『今年の経営テーマ』などを決め、契約維持に努めます。競争が入ると、当然顧問料には値下げ圧力が掛かります。逆に、テーマを絞り込んだ分、“何がしかの成果を出す”というプレッシャーがコンサルタントにかかり、業務料は増えてしまうのです。
  それどころか、テーマを絞っても、経営者から“テーマ外の相談”があります。顧問料を“限定テーマ”に絞り込んだはずなのに、“あれもこれも”という要求が始まるのです。そして“成果”が実感されなければ、ある日突然、“顧問契約解消”の告知が、経営者からなされます。
       
   
    【03】 会計事務所業界も…
   
        会計事務所の業務内容は、経営コンサルタントよりも“確立”されているため、当時は、同じ状況には陥りませんでした。しかし、今、比較的優秀な経理担当者がいる企業では、“外部からアドバイスを受けながら自社で決算し申告する”ことが、今のところ徐々に“常識化”しつつあります。
  中には、“決算処理で困ったら、ネットで適当な事務所に問い合わせる。それでも分からない時は、直接税務署や国税庁に問い合わせる”という経営者も増えているのです。それは『経理はパソコン・ソフトで行う。外部の専門家には、難しいことだけを聞く。その際、税務署や国税庁に聞けば、無料で答えてくれる』というのが、“今”の状況だからです。
  もちろん、それでも顧問契約はなくなりません。なぜなら、経営者ばかりか、経理担当者までもが“経理音痴”である企業は、まだまだ少なくないからです。しかし、ここに、もう一つの“問題”が起きて来ました。
       
   
    【04】 もはや経理音痴の企業に“明日”はない!
   
        経済状況が益々厳しくなると、“経理音痴”の企業は儲かりません。場合によっては、売れば売るほど損をする“価格”を設定していても、それに気付かぬ企業も多いのです。厳しい経営環境下では“経理音痴かどうか”が、想像以上に業績を左右します。そのため“音痴な企業”には利益が出ません。利益が出ないと、各方面の“経費削減”に走ります。会計事務所の顧問料にも、値下げ要求を出すでしょう。
  経理音痴でない経営者は、自主申告に向かい、会計事務所の顧問先には経理音痴の企業しか残らないとしたら、今後の“顧問契約”は、益々労多くして益が少ない事態に陥りかねないのです。経営音痴ではない企業との契約ができても、『そんなこと、税務署なら無料で答えてくれるよ』と言われると、現状のままでは高額の顧問料は取れなくなるでしょう。
       
   
    【05】 単なる付加価値アップでは果たせなかったもの
   
        もちろん、だからと言って、単なる“付加価値アップ”では話になりません。今まで“付加価値アップ”という掛け声の下で、あらゆるサービスを“無料(または顧問料の範囲)”にしてしまったため、顧問契約形態のまま労を増やしても、事態を変えるエネルギーにはなりそうにないからです。
  では、どうするか。答は、言葉としては非常にシンプルで、『会計事務所も他の事業同様、自分の商品を意識して商品力強化(有料商品を分かりやすく提示して契約するスタイルの強化)で乗り切るしかない』のですが、問題は“言葉”よりも“中身”にあります。あるいは“中身全体”よりも、“具体的にイメージできるピンポイントテーマ”を持ち得るかどうかにあるのです。
  かつての経営コンサルタントも、多くの人が総論として、“商品力の強化”をうたいましたが、“いったいぜんたい、専門業の商品とは何か”を問題にしなかったところでは、たとえば“パソコン・ソフト販売業”などへの転身に留まり、結局、“営業力”の差で、既存企業に打ち勝つことはできなかったからです。
       
   
    【06】 会計事務所は今“何”を打ち出すべきなのか?
   
        そのため、今必要なのは、専門業には何ができるか、会計事務所には何が可能かなどという“漠然”とした思考ではなく、“我が事務所にしかできないことは何か”、“が自信を持って打ち上げられるものは何か”を探し出すことから始めなければならないのです。
  これからの会計事務所は、どうあるべきかなどと考え、一つの答を出すと、そこに“今苦しんでいる会計事務所が殺到する”でしょう。競争激化は避けられません。しかし“私にできること”、“私にしかできないこと”から考えるなら、たいてい、同業他事務所は“関心をも示さない”ものです。
  繰り返し繰り返し、筆者が“自事務所や自分の中に眠る事業可能性の種(シーズ)を探す技術や方法が重要だ”と申し上げて来たのは、そのためです。そして“シーズ開拓”を、学術論文のようにではなく、日常実践的に取り組む“現実発想”が必要になるのです。
       
   
    【07】 確かに“急”には変わらない現実の中で…
   
        ただし“現実発想”に立つと、もう一つ見えてしまうものがあります。それは、仮に自事務所で“脱顧問契約”に取り組んでも、他の多くの事務所は、こう言ってよければ“これまでの常識から抜け出さない”だろうという現実です。
  そのため、“新しい取り組み”を始めると、業界内で、少数派、時には“変わり者派”に分類されてしまうこともあり、気分の悪さや仲間はずれのリスクが生じてしまうということです。それでも、敢えて、今“脱顧問契約発想”を、改めて取り上げるのは、顧問契約への固執が、競争激化の中で、顧問契約引下げ方向に働き出したからです。
  しかも、新規の契約を安くすると、既存の関与先との“料金差”が開き、場合によっては、『優良企業から多くの顧問料を得ている』という、良心の呵責的な印象の中に陥るかも知れません。呵責など、単に気持ちの問題だ、と割り切ろうとしても、たとえば、関与先を呼んでセミナーを開く時、新しい提案を行う時、“バランスの悪い顧問料体系”は、実際上の“足かせ”になるものです。
       
   
    【08】 全体発想よりピンポイント志向から
   
        そのため、このテーマには、現実的かつ慎重に取り組む必要があります。そこでまず、“大きく事務所全体の課題を取り上げる”のではなく、ピンポイントにテーマを絞り込みながらも、“方向性のイメージを明確にする”という、やや難しい取り組みが必要になるのです。
  会計事務所が、完成された業界であり、外部からとやかく言われたくないという意見にも、畏敬の念を持って傾聴すべき内容が多々あります。しかし、同時に、それがビジネスである限り、会計事務所業務もまた、ビジネスの原則を無視しては成り立たないとも言えるはずなのです。
       
   
    【09】 2つの手掛かり
   
        理屈より“実践事例”でイメージを作ることを目指し、現在までに、2つのCD講座を作成しています。歴史的とも言える大きな転換期に際しては、通常期のように“目前のニーズ変化に合わせて方向を調整する”より、たとえ“目前のニーズを一時的に無視しても事務所の意志”を固める必要があります。
  この意志が薄ければ、目先に惑わされて、長期の基盤が作れないからです。そのため、まずは、考え方や例示的イメージに接していただきたいと思うのです。私どもの見解ばかりではなく、他の考え方や事例も、大いに研究されるべきかも知れません。
  しかし、最終的には、誰かのマネや模倣ではなく、“自分の中の深い部分から湧き上がって来るような可能性”を探りたいと考えられる先生方と、具体的な成果を着実に積み上げる活動に、取り組みたいと願ってやまないのです。
       
       
   
 
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